睡眠とイメージトレーニング

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睡眠とイメージトレーニング

投稿  Matt on 2010-06-18, 2:16 am

睡眠とイメージトレーニングが楽器の練習に効果的であるという、興味深い論文を見つけました。
少々長くなりますが、この場をお借りしてご紹介させて頂きます。

原文はこちらからPDFファイルをダウンロードすることができます。
http://madisonjazz.files.wordpress.com/2010/05/practicingandcurrentbrainresearchbygebrian.pdf

論文は Dr. Molly Gebrain (Rice University) が自身の研究と、Matthew Walker (Harvard Medical School) 、そして Alvaro Pascual-Leone (National Institutes of Health) の研究成果をもとに書かれたものです。論点は、(1)脳の働きを知ることによって、限られた時間の中でもより効果的に音楽(楽器の演奏)を習得することができる、(2)それには十分な睡眠時間の確保とイメージトレーニングが有効である、というものです。


「音楽家は最新の脳科学から何を学べるか」


以下、簡単ですが要点をまとめて見ました。

論文は四項目から構成されています。
1.基本的な脳の働きについて
2.音楽家の脳と、音楽家でない人の脳の違いについて
3.睡眠による音楽学習の効果について(実験)
4.イメージトレーニングによる音楽学習の効果について(実験)


1.基本的な脳の働き

新しいことを学ぶとき、脳の中ではニューロン細胞同士がシナプスを介して新しい結合を作り上げていきます。ニューロンは始め、四方八方に信号を発信し、正しい神経経路を模索し始めます。その過程は、たくさん穴の開いたホースから水が四方八方に噴出す様子に例えることができます。ホースの中に上手く水を流すには、ホースに開いた無数の穴を一つ一つ塞いで行く必要があります。

練習で失敗するということは、ホースの穴を一つ塞ぐようなものです。繰り返し失敗し、一つ一つ穴を塞ぐことで、正しい神経経路(ホース)にスムーズに信号を流せるようになります。

しかし「間違った」という意識がないと、穴を塞ぐどころか、かえってその穴を広げてしまい、水がその横穴へ逸れていきます。そのため何か新しいことを学ぶとき、正しいことを最初に学ぶということは、「間違い」を知る(意識することができる)、つまり横穴を広げない上で非常に大切なことです。

また、ニューロンがシナプスを介して新しい神経回路を確立するには1週間程度かかります。


2.音楽家の脳と、音楽家でない人の脳の違いについて

音楽家の脳は非常に効率的かつ自動的で、簡単な音階やリズムなどを演奏する場合、殆ど脳が活動しません。一方、音楽家でない人の脳は、活発に動きます。

また音楽家の脳は、運動を司る部分と聴覚を司る部分が結びついています。音楽家が耳で聞いた音楽をそのまま演奏できるのは、その結合のためです(聴覚から運動へ)。また逆に、音楽家がピアノをまねて机を指で叩くとき、音楽家はその音を脳の中で聞いています(運動から聴覚へ)。

音楽家が持つこの自動的かつ効率的な神経回路を脳細胞が構築するには、数日から数週間かかります。

楽器を演奏する時のように、いつも頭の中で歌うこと、またそれに合わせて指や腕、口を動かすことは、脳内の聴力を司る部分と運動を司る部分をつなぎ合わせる上で、とても効果があります。


3.睡眠による音楽学習の効果について(実験)

早く指を動かす(叩く)運動(4-1-2-3-4、小指は4で人差し指は1)を3つのグループに行わせます。

(グループA)朝10時に指示し、その日一日中練習を続け、間に何度も試験を行う。
(グループB)朝10時に指示し、その日一日中練習を続けるが、試験は夜10時に1度だけ。就寝し、そして次の日朝10時に再試験。
(グループC)夜10時に指示し、少し練習し、就寝。そして次の日朝10時に試験。

(結果)グループAは練習と試験を繰り返すことにより、少しずつ上達しましたが、グループBは朝の再試験で驚くほど上達を見せました。そしてグループCも、就寝前と後を比べると、驚くほどの上達を見せました。グループCは殆どの時間を寝て過ごしているにも関わらずにです。

これは「寝さえすれば練習しなくてもよい」というわけではなく、時間を効果的に使うには「寝る」ということを考慮する必要があるということです。

寝ている間に脳細胞は結合を強化します(カルシウムを伴って)。このとき必要な睡眠時間は8時間、最後の2時間のノン・レム睡眠時がもっとも発達を促します。


4.イメージトレーニングによる音楽学習の効果について(実験)

鍵盤をC-D-E-F-G-F-E-D-C と早打ちする実験を二つのグループに行わせます。被験者は音楽家ではなく、ピアノを弾いたこともありません。両グループとも1日の練習時間は2時間、それを5日続けます。

(グループA)実際にピアノの鍵盤で練習。
(グループB)頭の中でのイメージのみ。指を動かしてもいけない。

毎日、練習の最後に試験を行います。グループBが実際に鍵盤に触れるのは、この時だけです。

(結果)5日目には両グループとも同じレベルの早打ちに達することができました。その後、グループBに2時間だけ実際の鍵盤で練習させたところ、完全にマスターすることができました。(グループAは10時間も練習したにも関わらず)

実験の際、脳の発達(指の運動を司る部分)を調べると、驚くことにグループAよりもグループBの方が大きく発達していました。イメージトレーニングは脳の運動部の発達を加速させる上でとても有効だということが分かります。

旅行や怪我などで練習時間が取れないとき、聴くこと、歌うこと、動くこと、そして「考える」ことが、楽器の演奏を上達させる上で非常に有効です。演奏することを「考える」だけで脳が実際に変化するからです。またその変化は「寝ている間に起こる」ということを考慮することが必要です。

以上


最終編集者 Matt [ 2010-06-18, 5:36 pm ], 編集回数 2 回

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Re: 睡眠とイメージトレーニング

投稿  rhapsodist_silenced on 2010-06-18, 7:02 am

Mattさんはじめまして。

実に興味深いですね。
以前、スポーツの世界でも同様の実験をし、効果的に競技の上達をはかれたという記事を読んだことがあります。
一部の自転車選手やレーシング・ドライヴァーも実践していると聞きました。

実際、僕も夜に練習してから充分な睡眠をとると、翌日確かに上手になったような気がします。
イメージは人間の可能性を広げてくれるのでしょうか。

GO CHEASEHEAD!

rhapsodist_silenced

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Re: 睡眠とイメージトレーニング

投稿  Matt on 2010-06-18, 5:20 pm

rhapsodist_silenced さん、こちらこそ始めまして。

ロックの若者がやる、エア・ギター。今まではただの格好付けだと思い、冷ややかに見ていました。
この論文を見てからは、好意的に見れるようになりました。(実際、論文の中では エア・バイオリン について触れています)

エア・ギター + カルシウム + 睡眠 = 上達

この式は簡単ですが、僕の場合は一番の問題が睡眠時間です。なかなか8時間も睡眠時間がとれません。だから上達が遅いのでしょうね。

Matt

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Re: 睡眠とイメージトレーニング

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